読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

なにかが入って、なにかが出る

カガク (化学・科学) 、留学、資格など、経験談を気ままに発信していきます

日本酒は身近だからこそ、奥が深い!知るともっと楽しくなる「日本酒のランク」と「日本酒の旬」についてまとめてみた

伝統工芸 化学 科学 文化 雑記

f:id:arts_and_sciences:20170102153923j:plain

photo credit: lensonjapan Gekkeikan sake brewery in Fushimi via photopin (license)

 

あけましておめでとうございます!てけです。

 

昨日、日本酒の個性はどのようにして生まれてくるのかを、化学工学の視点でお話しした記事を書きました。

 

arts-and-sciences-in-society.hatenablog.com

 

結構アクセス数が伸びてきているので、追加でもう1つ日本酒の話をしようと思います。日本酒のランクについての話と、日本酒の旬についての話です。

 

特に、日本酒の旬については、意外と知らない人も多いのではないかと思います。少なくとも僕は、日本酒の旬について最初に学んだときには、衝撃的でした。今では、日本酒の旬を楽しみながら生きています。旬を待つってとても楽しいじゃないですか。なので、皆さんにも、日本酒の旬を知ってもらいたいです。

 

 

純米大吟醸の生原酒」というランクは高級そうに聞こえるけれど、どのような基準で決まるか知っていますか?

皆さんが酒屋さんに行ったときに、「純米大吟醸」や「吟醸」といった言葉や、「原酒」といった言葉が書かれたラベルをよく目にされているかと思います。しかし、どのような日本酒が純米大吟醸」で、どのような日本酒が「原酒」なのでしょうか。どのような日本酒が "生" なのでしょうか。皆さんご存知でしょうか。こういうランクについて少しお話をしますので、ちょっとお時間くださいな。

 

吟醸度合いは、原料の米をどれだけ削るかで決まり、純米かどうかは、日本酒のアルコール分が全て発酵由来かどうかで決まる

皆さんの中には、日本酒に使うお米は、精米した後そのまま使うと考えている方もいらっしゃるかと思いますが、実はそうではないのです。日本酒に使えるお米の部分は、精米後のお米の中心部分しかないのです。(正確にいうと、お米の周辺部には、胚芽由来のたんぱく質などの不純物が多く、雑味や悪臭の原因になってしまうので、製品用には使わないのです。)

 

このとき、日本酒に使われる、お米の中心部分の名前を「心白 (しんぱく)」と言います。心白部分は、白く濁っているので、目で見ても見分けがつきますよ。

 

地球のココロさんの記事の中に、日本酒用のお米が削られていくとどのようになるかを紹介した画像がありましたので、こちらを引用してお話を進めます。

 

f:id:arts_and_sciences:20170102163612j:plain

出典: 日本酒の最高峰「大吟醸」造りで削り取られた米たちの行方は? | 地球のココロ:@nifty

 

上の図にあるように、心白部分を残して削っていくと、お米の形がだんだんとなくなり、まるでシリカゲル顆粒のような形のお米になっていきます。高級な日本酒は、お米の多くの部分を削り取ってしまいます。結果として、その分多くのお米を必要としますので、材料費だけでもずっと高くなってしまうんですよね。

 

ちなみに、日本酒用に表面を削られたお米の味について、気になっている方もいるかと思いますが、味は、意外と美味しくないと言われています。何故ならば、お米の美味しさは、コメの表面に多く存在する糖分やタンパク質によってもたらされることが多いからです。お米の美味しさの元は、不純物によってもたらされているのです。

 

では、ここからは具体的にランクのお話をしましょう。以下の表を見てみてください。

 

f:id:arts_and_sciences:20170102170700p:plain

(解説) 精米歩合は、削った後のお米の質量を、削る前の玄米の質量で割ったものです。100 %から精米歩合を引いた割合は、削って取り除いたお米の割合になります。

例えば、100 gの玄米を削って44 gの日本酒用のお米に加工した場合、精米歩合44 g / 100 g = 44 %となり、削ったお米の量は、100 % - 44 % = 56 %となります。なお、精米歩合が44 %のお米のみを使って日本酒を作れば、上の表より、それは純米大吟醸になります。

 

日本酒のランクは、上の表にある通り、「どれくらい、お米の周辺を削っているか」という観点と、「醸造用アルコールの添加がされているかどうか」という観点の掛け算で決まります。たくさん削っていればいるほど、より多くの材料を必要とする上に、手間暇がかかってきますので、高価になっていく傾向にあります。そして、日本酒のアルコールが、全てお米の発酵によってもたらされたアルコールであれば、混ぜ物なしとして、純米酒の名称がつくというわけです。

 

しかし、ここで面白いのは、必ずしも、"純米大吟醸"が最も美味しいお酒であるわけではないところです。日本酒の美味しさは、必ずしも、材料の白米の中心部である心白の発酵でもたらされるわけではなくて、周辺部に近いところにあるタンパク質や糖分が発酵したり、不純物として混ざることでも生まれてくるとも言われています。今や世界で知られている "UMAMI" の元は、タンパク質の元であるアミノ酸という物質です。なので、「純粋であればあるほど美味しい」わけでは必ずしもないのです。

 

(ちなみに、削り取られたお米は、捨てられてしまうのでしょうか。いいえ、実はしっかりと売り物になっています。その売り物の名は、ぬか (糠) です。決して無駄にはなっていないんですよ。)

 

 

"生" かどうかは火入れしていないかどうかで決まる

 お酒屋さんで日本酒を見ている時に、今まで話していた "大吟醸" や "吟醸" といった言葉の他に、よく "生" という言葉を見かけることがあると思います。"生" かどうかは、どのようにして決まるのか?それは、「火入れ」をしていないかどうかで決まります。「火入れ」をしていない日本酒を "生酒" といいます。

 

日本酒を作る工程において、発酵が終了した後で、濾過をして不純物やほとんどの麹や酵母を取り除きます。そして、その後で、加熱をしています。そうしないと、残った麹や酵母によって日本酒が発酵しすぎてしまったり、火落菌 (ひおちきん) という乳酸菌の一種によって日本酒が腐敗してしまい、白く濁ってしまうのです。発酵しすぎを防ぎ、殺菌をするための加熱工程を「火入れ」と呼びます。

 

しかし、醸造所直営のお酒屋さんでは、火入れをしていない日本酒を期間限定で売っていることがあります。大抵は (当たり前ですが) 冷蔵庫の中に見つけることができます。

 

「生酒」のいいところは、何と言っても、日本酒の風味がそのまま味わえるところでしょう。香り成分の多くは、温かくなると空気中に飛んでいきやすいものばかりです。したがって、加熱をするということは、香り成分をある程度、逃してしまうことになります。さらに、加熱をすることで、香り成分の一部が変化してしまうこともあり得ます。しかしながら、加熱をしなければ、香り成分をほとんど逃がさずに出荷できます。

 

フレッシュで強い香りと味わいを持つ生酒は、僕をわくわくさせてくれます。酒屋さんの冷蔵庫の中に生酒を見つけると、「おっ!ついにきたか!」と嬉しくなります。

 

原酒かどうかは、水を足していないかどうかで決まる

"生" かどうか以外にも、「原酒」 という言葉もよくお酒屋さんでは聞かれる言葉です。「原酒」とはどのようなお酒なのか、それは、差し水をしていない状態の日本酒です。

 

発酵が終わった後の日本酒は、濾過をして不純物や、麹や酵母のほとんどを取り除かれます。濾過が終わった日本酒は、アルコール度数が20 %前後の、濃ゆい日本酒です。

 

この状態のまま出荷した場合、その製品は、原酒になります。日本酒の素だから、原酒と言われるわけです。

 

一般的な日本酒のアルコール度数が15 %前後なのは、日本酒の素である原酒に水を加えて薄めているためです。カルピスに水を加えてカルピスウォーターにする感じですね。

 

ここで、水を加えること自体が、必ずしも悪いことではない点には注意してほしいです。日本酒の香りの成分の中には、水を加えることで花開く成分もあるほか、水を加えることで、香りのバランスが取れて、結果として、より良い香りになることもあります。ウイスキーのストレートよりも、水割りの方が香りが開くことがあるのと同じです。とんこつラーメンも、タレの匂いはすごい匂いでも、スープやお湯を足すといい香りになるスープはたくさんあります。必ずしも、濃い日本酒であればあるほど香りのバランスが良いとは言い切れません。なので、原酒は日本酒より常に質が高いとは言えないことは、強調させてください。あくまでも、好みですね。

 

水割りと香りの関係を化学工学の視点からお話した記事がありますので、もしよかったらこちらも見てみてほしいです。ウイスキーや焼酎への見方が変わるかもしれませんよ。

 

arts-and-sciences-in-society.hatenablog.com

 

では、原酒の話に戻ります。原酒の味は、とにかく、「濃い!」って感じです。本当にガツンと日本酒の味がします。舐めるように日本酒を飲んでも、十分に日本酒の味が口中に広がります。あまりに濃いので、相性の良い原酒にハマると、一般的な日本酒の濃さでは物足りなくなってしまうことすらあります。

 

しかし、一般的な日本酒の感覚で飲むと、あっという間に酔っ払うので、注意です。焼酎を飲むような感覚で飲んだほうがいいですよ。一般的な日本酒では、ロックにすることはあまりないかもしれませんが、原酒は日本酒の素ですので、ロックで飲んでも十分イケます。ストレートに飽きたらロックもいいですね。

 

そして、この原酒の中でも、火入れをしていないものは、「生原酒」と言われます。日本酒の旬の季節に京都の伏見に行くと、生原酒をいろいろなところで見つけることができます。僕の冬から春先にかけての、楽しみの一つです。

 

そして、生原酒には、天然の微炭酸状態になっているものがあり、これがまた、うまいんですよ。発酵した後の日本酒にほとんど何も手を加えずに出荷しているから生まれる商品です。微炭酸効果は恐ろしく、アルコール度数が高いはずなのに、シュワっとする感覚が爽快で、恐ろしいほど飲みやすいお酒になってしまいます。あっという間にするすると飲んでしまいます。恐ろしいですね。

 

日本酒の旬は、1年に2回!「新酒」の季節と「ひやおろし」の季節

では、ここからは話を少し変えて、日本酒の旬についての話をしていきましょう。先ほど、僕は、生原酒を探すことが、"冬から春先にかけての、楽しみの一つ" とお話をしましたね。その "冬から春先にかけて" が、日本酒の旬の1回目です。

 

冬から春先にかけて、より詳しくいうと11月から3月くらいの時期は、日本酒の新酒の季節です。秋にお米を刈り取り、新鮮なお米を日本酒に仕込んで、出来上がるのが11月から3月くらいになるのです。この時期には、生酒や生原酒もたくさん出てきます。食欲の秋の終わりくらいに始まって、そのあとは熱燗でもいいですね。サイコーです。

 

もう一つの旬は、夏が終わり、秋が深まってくる頃、時期でいうと、9月中頃から11月くらいでしょうか。この頃には「ひやおろし」と言われる日本酒が出回る、2回目の旬になります。

 

ひやおろし」というのは、冬に絞った新酒に火入れをしてから、夏を越して次の秋まで、約1年間にわたり熟成をさせたお酒のことを言います。新酒よりも、より旨味が強く、深みがあり、まろやかな風味が特徴です。ひやおろしを探して酒屋さんをフラフラするのも、僕の楽しみです。本格的な秋の到来を表す風物詩です!

 

新酒とひやおろしの2種類の日本酒が味わえる時期が、日本酒の旬です。そういえば、今は、ちょうど日本酒の旬の季節ど真ん中!皆さんも、旬の今こそ日本酒を楽しみましょう!

 

広告を非表示にする