読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

なにかが入って、なにかが出る

カガク (化学・科学) 、留学、資格など、経験談を気ままに発信していきます

【アメリカ大学院留学】日本の大学院もいいけれど、博士課程に進みたい学生は、アメリカの大学院に行こう!

アメリカ留学 イノベーション ビジネス 勉強 化学 化学工学 文化 科学 資格 雑記

f:id:arts_and_sciences:20161223153806j:plain

photo credit: _Hadock_ Study Time via photopin (license)

 

こんにちは。てけです。

 

 

今日、NHKにこのようなニュースが掲載されていることを発見しました。

www3.nhk.or.jp

 

僕も、この記事に書かれていることは、確実に起こるだろうなと感じでいます。というより、もう起きています。僕は、アメリカの研究室で働いた時に受けた衝撃的な出来事について、以前記事を書きましたが、世界中の魅力的な人材をかっさらっているアメリカは、ここまでやっているのです。サービス残業当たり前の日本の労働環境に、世界のトップレベルの人材は飛び込もうとするでしょうか。答えはNOです。

 

arts-and-sciences-in-society.hatenablog.com

 

実際、僕が知っている人で、日本でポスドクをしていた人がいたのですが、任期を終了した途端、さっさとカナダ (アメリカの仕組みとかなり似ているといっても過言ではない国) に渡ってしまいました。日本人としての僕は、これはとても悲しいこととして受け止めましたが、同時に、「まあ、当たり前だわな」と思う気持ちもありました。僕がもし同じ立場だったら、そうするでしょうし。

 

実際、僕は大学院への進学も考えたこともありましたが、日本の大学院に進学することは全く考えることができませんでした。日本の大学院に進学するくらいなら、進学しないほうがいいと本気で今でも思っています。

 

今回は、その理由も含めて、アメリカの大学院について、少しお話をしようと思います。

 

授業料免除に加え、年収300万円から350万円を得て研究できるアメリカの博士課程

一般的に、日本の大学院では、授業料を納めて授業を受け、研究を行い、学位を得るのが当たり前と考えられているようです。しかし、アメリカは違います。授業料の免除に加えて、年収で300万円から350万ほどもらいながら、大学院生活をすることができるのです!アメリカのトップレベルの大学では、授業料は年間500万から600万円かかる学校も珍しくありませんので、免除分も年収と考えれば、年収800万円から年収1,000万円くらいもらいながら働いているような状態と同じとも言えます。破格の待遇なのです!

 

例えば、アメリカの理工系大学の不動の王者、マサチューセッツ工科大学 (MIT) の化学工学科の大学院博士課程のFinancial Supportページを見てみましょう。

Financial aid for graduate students in the Department of Chemical Engineering is available in the form of fellowships, research assistantships, or teaching assistantships.  Students receive full tuition, a stipend, and individual health coverage. (中略) In academic year 2014-15 stipends for assistantships are $2965 per month for PHD students and $2720 for MSCEP students.  The Department will also pay individual health coverage for 12 months. Outside support sometimes exceeds the internal support level. If it does not, then it is supplemented up to the full internal support level.

出典: ChemE | Financial Support

 

これは要約すると、「MITの化学工学科の大学院 (主に博士課程) の生徒は、(返済義務のない) 奨学金か、研究面か授業面で教授をサポートすることを通して、授業料の完全免除、生活費補助金、及び保険料免除の健康保険を受けることができます。なお、生活補助金の額は、月額で約30万円です。」となります。生活補助金だけで、日本の若手サラリーマンよりも高い月収です!

 

これに似た制度は、アメリカのトップレベル大学院にはほぼ確実に整備されています。少なくとも、アメリカの化学工学及び化学科でトップ10にランクインした大学院の全てに整備されていましたし、20位から30位くらいにランクインする大学院にも、おなじような文言が書かれていました。気になる方は、こちらの記事から各大学院のページを覗いて、ご自身の目で確かめてほしいです。

 

arts-and-sciences-in-society.hatenablog.com

 

 

arts-and-sciences-in-society.hatenablog.com

 

では、なぜここまで大盤振る舞いできるのでしょうか。それは、はっきり申し上げると、お金の差が最も大きいと思います。米国の大学はお金を持っているのです。日本のトップ大学である東京大学の予算 (2013年度で100億円) と比べて、ハーバード大学の予算は約400倍です (2013年度で3兆8,800億円)!まさに、世界中の優秀な人材を囲い込むことに真面目に取り組み、実績を積み上げてきたからこその成果でしょう。優秀な人材は、お金持ちになる可能性が高いので、お金持ちになって、母校に寄付をする人も増えるでしょう。結果的に、圧倒的な予算を持つことができているわけです。東京大学基金が、米国の大学院と日本の大学院の予算比較をしていましたので、以下にまとめました。

 

f:id:arts_and_sciences:20161221115301p:plain

出典: 東京大学基金「寄付の必要性」  

 

ここまで予算の額が異なるため、僕は、あえて言いたいのです。今、学部を卒業して博士課程に行くことを考えている人たちや、社会人留学を考えている人たちは、ぜひ米国の博士課程に行ったほうがいいと思います。なぜこのようなことを言っているかというと、僕は、頭脳流出をもっと行わないと、日本政府は、教育への予算配分について本気で取り組まないと考えているためです。

 

日本で自信に満ち溢れている若者、ポテンシャルがあるのにくすぶっている若者は、もう海外に行きましょう!

 

(注意!) 米国において、以下の場合には授業料免除や生活費補助が受けられない可能性が高いので、注意をしてください。

  1. 米国のトップ大学でない場合。米国の大学院生に対してもたらされる福利厚生は、あくまで大学の予算が潤沢だからこそもたらされています。大学のレベルがトップレベルではない場合、予算が潤沢でない可能性が高く、授業料の免除や生活費補助が受けられない場合があります。そのような場合は、大学院のウェブサイトに明記されていることも多いので、確認を必ずしてほしいです。
  2. 修士課程のみで博士課程がないプログラムの場合。米国のトップ大学でここまで恵まれた福利厚生を用意する目的は、高度な専門性を有する「博士の養成」です。従って、博士課程での進学を想定していないプログラム、例えば修士課程のみ修了するようなプログラムの場合は、授業料の免除や生活費補助が受けられない場合があります。この場合も、大学院のウェブサイトに明記されていることが多いですので、確認をしてほしいです。
  3. 専門職大学院 (経営大学院、医学大学院、法科大学院会計大学院、デザインスクールなど) の場合。専門職大学院では、博士の養成を主軸に置いていないため、授業料の免除や生活費補助が受けられない場合があります。こちらの場合も、大学院のウェブサイトに明記されていることが多いですので、確認をお願いします。

 

修士卒が評価される日本、博士卒が評価されるアメリカ

先ほどご紹介をしたNHKの記事では、現在修士課程に在籍している学生たちが、博士課程に進まない実情を示しています。記事の中では、東京大学工学系研究科の北森武彦教授の研究室の生徒の進路について、以下のように書かれています。

 

北森教授が若い研究者の間に「異変」が起きていると感じたのは、今から10年ほど前、博士課程に進んで研究者の道を選ぶ学生が大きく減ったのがきっかけでした。
それまでは、毎年、数人が博士課程に進んでいたのが、急に誰もいなくなり、いてもせいぜい1人。大学生から修士課程を経て、これからというところで、就職の道を選ぶ学生が続出し始めたのです。

 

(中略)

 

厳しい現実の中にあっても、研究に魅力を感じるという若者もいるのではないか。私は、集まってくれた修士課程の学生8人に、博士課程に進むかと尋ねました。
その結果、全員が「博士課程に進まない」と答えました。

 

「博士課程か就職か、迷ってはいたんですが、僕の中で、博士課程は『修業』というイメージが強くて、企業に就職しようと思いました」
「社会の歯車というイメージもありますが、社会人として働くほうが安心感はあります」
若者たちの答えは率直で現実的でした。

出典: 「日本の科学の空洞化」NHK NEWS WEB

 

www3.nhk.or.jp

 

このような答えは、科学技術で食べていこうとする国であれば、憂うべきことです。特に、以下の点でです。

 

  • 修士課程を修了した段階で、博士課程に進まずに就職するという、一番勿体無い道を歩んでいる人が多いこと。
  • 修士課程で止めておいたほうが、企業に入りやすい状態になってしまっているということ。

 

僕は、この2点はとても勿体無いことだと思います。なぜなら、僕は、大学院の醍醐味は、博士論文のための研究にあると考えているためです。そして、このような状況が続いている限り、日本で優秀な研究者が働きたいと思うでしょうか。

 

僕は、博士課程を修めた人は、どんどん海外に行ったほうがいいと思っています。特にアメリカに行くことを僕は強く勧めます。

 

なぜなら、まず、アメリカと日本では、博士と修士に対する考え方は異なります。アメリカでは、博士には、「Dr.」 という肩書きがつき、尊敬されるべき対象として見られます。(実際、Dr.とつけるべき人にDr.をつけ忘れることは、あまりよろしいことではなく、博士号取得者には、Dr.をつけることがマナーになっています。) なぜならば、博士号取得者は高度な専門性を有する人材であるためです。日本では、博士卒の人たちに対して、「就職に失敗した人たち」を見るかのようなひどい見方をする人がおり、僕はそういう人は嫌いです。博士卒の彼らは自力で研究を遂行する力がある人たちなのですよ。これはすなわち、自力で業務を回す力も高いと言えると思います。

 

さらに、アメリカの大学院では、修士課程がない場合が多いです。したがって、アメリカでは、修士号は、「博士号を目指したものの、様々な理由により途中で大学院を退学しようとする生徒」に対して授与されるものとも考えられています。博士号がなく、修士号で完結するようなプログラムの場合は、博士課程を途中で辞めた場合にもらえる学位とは異なる名称の学位を授与され、差別化されていたりもします。

 

(例えば、化学工学科の修士号では、博士課程の途中に用意されている修士号の取得者には「M.Ch.E. (Master of Chemical Engineering)」という学位を授与するけれども、企業からの派遣者向けの修士課程など、修士号で完結するプログラムには、「M.Eng.Chem. (Master of Engineering, Chemical Engineering)」という学位を与える、といった細かすぎることが明記されていたりします。)

 

なので、職種によっては、修士卒は、「博士号取得者でない」という理由なだけで給料が学士卒と変わらないこともあり得るのです。

 

加えて、アメリカの大学院では、学士の後は博士の取得を目指すというシステム上、修士卒が博士号の取得を目指す場合、再度修士課程に相当するプログラムを受けてから博士課程への進学許可を得なければならない (博士論文の研究を3年間だけして卒業することはできない) 場合もあり得ます。単位がうまく移行できれば、再度修士と博士のプログラムをフルで受けた場合にかかる期間 (4年〜6年程度) より短い期間で終えることもできるとは思いますが、そのような例はあまり多くはない印象です。

 

したがって、アメリカでは、修士号は割に合わず、博士号こそ大切な学位という認識も根強くあるのです。

 

これは、日本の構造とは真逆です。加えて僕は、日本企業が考えている「最も採用したい層は修士卒」という考えがあまり理解できません。結局、扱いづらそうなイメージを勝手に作り上げ、下からの突き上げがあるのではないかと勝手に上層部が恐れて、優秀な候補者を弾いているだけのような気がしています。少なくとも僕の周りの博士卒は、皆面白い人たちばかりです。コミュニケーションの達人、メンターシップの達人ばかりですよ。下手な芸人よりぶっ飛んだジョークを飛ばしまくっている人もいます。彼らは、自身の研究結果を他者に売り込む経験を豊富に積んでいるので、コミュニケーション能力はとても磨かれているように思います。

 

博士卒でアメリカの企業に就職すれば、平均年収で1200万円越えの世界で働くことも可能

加えて、アメリカの大学院で博士課程を修了すると、破格の待遇を受けることができる場合が多いことも、お話をしたいと思います。以下の資料を見てみてください。専攻と学位レベル、そして平均年収の間にある関係を示しています。

 

f:id:arts_and_sciences:20161223035651p:plain

 

日本で大台とされる年収は、年収1,000万円ですね。アメリカでも大台とされる年収があり、それは、年収10万ドルです。1ドル=120円とすれば、約1,200万円相当です。アメリカでは、そもそも学士卒であっても、理学部や工学部卒の学生は高給を得やすいのです。そして、博士卒ではさらに高給取りになれる可能性が高まります。従って、アメリカの研究者は、日本の待遇とは比べ物にならないほどの待遇で研究をしていることがお分かりいただけると思います。

 

さらに、日本では「博士まで行くと就職しにくくなる」と言われていますが、アメリカではそのように言われることはあまりないです。アメリカでは、高学歴であればあるほど、就職先に困らないのです。日本は、修士卒で失業率は最小になるものの、博士卒では、修士卒や学士卒の失業率の1.5倍を超える割合になってしまうのです。アメリカでは博士卒が最も就職しやすい社会であるけれど、日本は博士が最も就職しにくい社会なのです。

 

f:id:arts_and_sciences:20161223035543p:plain

 

(なお、今回の論点からずれるのであまり多くは話しませんが、日本は、非正規労働システムの発達によって、アメリカ流の失業率の計算、すなわち正社員のみを就業者と考えて計算をすると、かなり高い失業率が出てしまうことも、大きな問題なのです。)

 

これらのことから、アメリカ社会が博士卒の人材に対して、少なくとも日本よりは圧倒的に恵まれた環境を整備していることがお分かりいただけると思います。

 

元データはこちら↓

アメリカの学位別平均給与額 (2009-2011年度の平均) 及び失業率の推移 (2014年度)

PhD Salaries & Lifetime Earnings | MSU Career Success

日本の失業率の推移 (2015年度)

博士の就職事情-正規の仕事に就けるのは半分?!

 

 

これから日本の大学が、世界の優秀な人材を引きつけるために必要なこと

僕は、日本がこれから研究者を育てていきたいと本気で考えているならば、少なくとも以下の5つは最低限行わなければならないと思っています。

 

① 大学の施策: 日本の学士、または修士課程在学中の学生が博士課程に進みたいと思える環境を整備する

博士課程への進学率を上げるために、博士課程に進学した人たちに対して、返済義務のない奨学金を提供する必要があると思います。また、学士卒の生徒に対して、アメリカのように、一気に博士課程まで進ませるプログラムを用意してもいいのではないかと思います。そして、そのプログラムの生徒には、授業料免除だけでもすることができれば、博士課程を修了したいと思える生徒が増えるかと思います。

 

② 大学の施策: 大学教授にMBA留学をさせてみる

僕は、日本の大学が研究費不足にあえいでいる原因の一つに、「研究者側が予算を取ってこれない」こともあると思っています。決して、大学院や国家のせいだけではないと思っています。僕が大学時代に所属していた研究室の教授は、予算獲得の名手でした。企業や政府とのコネクションをうまく使って、自身や生徒の研究を売り込み、様々なところから予算を勝ち取り、研究費に大盤振る舞いできる環境を作っていました。

 

従って、これからは大学教授は起業家精神を持つ必要があるような気もしています。少なくとも、「自身の研究がどう社会の役に立ちうるのか」という問いに対しては、明確に答えられるようにはなる必要があるのではないかなと思います。そして、仮に研究成果の中で、お金を生み出せそうなアイディアがあれば、特許を積極的に取得する、あるいは、大学内ベンチャーを立ち上げるのもいいかもしれません。

 

そのような文化を醸造するために、大学教授にMBA留学をさせてみるのも、面白いのではないかと思っています。今まで研究一筋の方々が、MBA留学をすれば、得られるものはとてつもなく大きいですし、研究で使う頭の部分と、経営で使う頭の部分は異なるので、今までとは異なる思考法を重ねることで、研究にも新たなアイディアが生まれるかもしれません。

③ 企業の施策: 博士課程を卒業するメリットを、日本人お得意の「やりがい」などのアピールではなく、待遇で示す

 僕は、博士卒ではありませんが、博士卒がある程度恵まれた待遇であっても、いいと思っています。何故ならば、少なくともアメリカでは、博士課程を卒業するのは大変であることを知っており、アメリカの大学院を卒業した人たちはやはり高い専門性を持っている人が多かったからです。日本企業は、海外大学院を卒業した人たちが納得するような待遇を整備する必要があると思います。

 

ではどのような待遇が良いのか、それは企業によって異なると思うので、共通の方程式はありません。そこで、僕は一つの質問について考えてもらいたいと思っています。

 

「あなたはマサチューセッツ工科大学を、優秀な成績で卒業した卒業生です。今いる会社に引き続き残ろうと思いますか?もし残りたくないと考える場合、その企業がどうなれば、残ろうと思えますか。」

 

この質問に従って考えていけば、それぞれの会社に対してより良い解決策が出てくるのではないでしょうか。

 

実際に、海外の有名大学を卒業した後で、元いた日本企業を退職してしまう人が多くいるそうです。その最たる例は社費MBA留学制度で、その制度を利用して留学し、MBAを取得した後で在籍している企業を退職する方が多いようです。それは、やはり日本企業であまり魅力が感じられないと思う卒業生が多いためではないかと思います。とは言っても、外資コンサルティング会社や投資銀行のように、数千万円の初任給を出すのは難しいとは思います。ただ、MBA取得者に対して、より経営に近いポジション、より大きな裁量を得られるポジションを用意することはできるのではないかとも思うのです。

 

④ 国家の施策: 政府は、大学への補助金をさらに増やす。

日本は、日本の科学技術の発展のために、大学への補助金を増やす必要があると思います。 東京オリンピックへの設備投資問題で、再計算の結果浮いたお金だけでも、数百億円とあるわけですから、日本政府は、それくらいの規模のお金は、払える能力はあるわけです。僕は、絶対に補助金は出せると思っています。東京大学の研究費が約100億円であることは、この記事の最初の方で話しました。なので、数百億円あれば、複数の大学を東京大学レベルの研究環境に引き上げることも可能だと思うのです。

 

⑤ 学生の施策: 自信があるなら、海外に行ってしまう。

学生の皆さんは、今在籍している大学での成績を可能な限り高く保つとともに、早いうちから英語をしこたま勉強しておくことをお勧めします。そして、アメリカの大学院に行けるなら、行ってしまいましょう。アメリカのトップレベルの大学院に入って、お給料をもらいながら研究し、アメリカで就職して名を上げてから、日本の経済に貢献しても遅くはないはずです。まさに野球選手の黒田選手のような生き方ですよ。

 

「なぜなら日本人だから」この理由以外で、日本の経済に貢献したい、働きたいと思える理由はありますか?もしないならば、行動する時かもしれません。

 

 

 

 

 

広告を非表示にする