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なにかが入って、なにかが出る

カガク (化学・科学) 、留学、資格など、経験談を気ままに発信していきます

アメリカの研究室で働いた時の衝撃

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photo credit: This Ain't No Disco (www.thisaintnodisco.com) office_section_1_people_low via photopin (license)

 

こんにちは。てけです。

 

 

以前、僕はアメリカのケミカルエンジニア (chemical engineer) は、学士卒の初任給が600-1000万円オーバーですよとお話をしました。(タイトルは関係なさそうに見えますが、お許しを…。)

 

arts-and-sciences-in-society.hatenablog.com

 

 

この記事に関連して、僕がアメリカで働いた時に、特にびっくりしたことを1つだけ、お話しようと思います。実話です。

 

僕がアメリカで感動した、企業と労働者の対等さと法律遵守へのこだわり

 

僕がアメリカで働き始める時、労働条件についての話をしました。お給料と福利厚生の話がまず始まりました。申し分ない条件です。「いいですよ。よろしくお願いします。」と答えました。そして、その後にタイムカードを渡され、言われました。

 

「ここに労働時間を正確に記入するように。職場にいた時間は全て入れていいからね。」

 

その時の僕は、日本ではサービス残業が蔓延していることを知っていましたので、衝撃を受けました。そして、思わずこう言ってしまいました。

 

「本当ですか。すごく嬉しいです。研究したいだけしていいんですね。」

 

その時に返された言葉が、すごく印象に残っています。

 

いいですよ。あなたは研究することに集中してください。時間は気にしないでください。その代わり、申告は正直にお願いしますよ。

 

感動してしまいました。そして、申告した労働時間分、残業代もフルで出ました。「ウソではなかった。騙されてなかった。」とさらに感動しました。

 

 

法律を遵守するからこそ、強気でいられる 

 

この時に入った研究室は、予算がとても潤沢であり、恵まれた環境だったこともあったかもしれません。全てのアメリカの会社がそのような会社ではないと思いますし、研究室も、恵まれていないところからそうでないところまで、いろいろあるでしょう。

 

ただ、僕は、「研究室にいる時間を正直に申告して良い。すなわち、残業代はフルで出る。」という言葉を聞いた時、本当に嬉しかったですし、こう素直に感じました。

 

思いっきり仕事ができる!こりゃあ結果を出さねば。

 

同時に、このようなことも思いました。

 

相手が法律を遵守している以上、僕は何としてでも法律を遵守しなければならない。

 

アメリカでは、法律を遵守するという意識は、皆とても強いです。なぜなら、訴訟社会のため、自身に弱みがあると、訴訟で負けるリスクが高くなるためです。「自分 (原告) はしっかり法律を遵守しているのに、あなた (被告) はなんだこのザマは!」という感じで、訴訟を有利に進められてしまうのです。英語にもあるんですよ。汚い言葉なのですが、「ケツの穴は覆っておけ (※)」という言い回しで、「将来の訴訟リスクを最小限にするために、最大限努めよ」という意味の英単語が。

※ 「ケツの穴は覆っておけ」という言葉の英語は、直接書くのは控えます。何故なら、日本語で書かれたブログの中にいきなり英語で汚い言葉を書くと、もし日本語が読めない人がこのブログを偶然見つけた場合に、衝撃を受け、あらぬ妄想をすると思うからです。想像してみてください。エスペラント語で書かれた記事の中にいきなり日本語で「ウ●コ」と出てきたら、びっくりしませんか?日本語では、「カバー・ユア・アス」と発音します。

 

相手が法律を遵守している状態にある場合、自分が法律を遵守しなければ、訴訟にあった時、負けるリスクが圧倒的に高まるので、自分も気を引き締めなければという思いに駆られるのです。

 

こうなると、企業側、上司側からすれば、サービス残業を、労働者側からすればダラダラ残業や労働時間の水増しを起こすのが怖くなります。なぜなら、

 

(1) サービス残業をした場合: サービス残業をしていた証拠を労働者がおさえていて、将来もし解雇をされたときにその証拠を元に訴訟を起こされてしまったら、会社の信頼は大幅に傷つき、優秀な人材は流出し、優秀な学生には敬遠され、企業は最悪潰れてしまうでしょう。アメリカでは、億単位の賠償金がポンと請求されてしまう世界です。そんな訴訟社会では、「サービス残業でケチれるコストは、損害賠償に比べれば微々たるもの」と考えるのが合理的なのです。

 

(2) 水増しをした場合: 結果をしっかりと見られるので、労働時間と成果が明らかに釣り合わない場合、最悪解雇されてしまいます。相手は、水増しをした残業代すらも払っていますから、相手に落ち度はないです。解雇不服で裁判を起こそうにも、精査の中でもし水増しがバレたら?と考えたら恐ろしくなりませんか?相手には落ち度がないのですから。また、「客観的にみて能力がない」ことが証明されてしまえば、敗訴のリスクも高まります。

 

なので、残業代をフルに出すことのみならず、労働者を守るための法律を遵守することは、労働者に対して、「あなたが法律を遵守することが、企業に対する貢献でもあるのですよ。」というメッセージになるのです。これがコンプライアンスの向上にもつながり、同時に、「私たちには落ち度がないから、もし不正をしたら...わかっているよね?」という牽制もできるのです。

 

 

サービス残業を本気でなくすように努めれば、企業の魅力が上がり、結果的により大きいリターンが得られるのではないか

 

結果的に、僕は思うのです。

 

サービス残業をなくした方が、企業にとってメリットが大きいのではないか

 

と。

 

日本でサービス残業が蔓延しているのは、結局、「日本の労働者はこき使っても、訴訟なんてしないだろ!入れてやってるんだから。養ってやってんだから。」という考えが蔓延していることが理由だと思います。しかし、僕はこういう考え方をする企業は、危険だと思います。

 

僕は、初任給で日本がアメリカよりも大幅に低かろうと、労働者がそれで納得すれば、それはそれでいいと思います。アメリカでは退職金がない企業も多いですし、保険や医療費に多額の出費をしなければなりませんし、国民皆保険ではないので、3割負担の概念なんてものもないです。そして、外食では日本よりずっとたくさんのお金を払わなければなりません。額面だけで測れるものばかりではないと思います。法律の最低基準を満たす初任給であれば、極端な話、それでもいいのです。

 

しかし、サービス残業は、法律を遵守していないことが問題なのです。これは企業にとって、負い目です。人件費をケチれたとしても、明らかに負い目です。自殺行為だと思います。

 

何故ならば、訴訟を起こされた時の、企業側の敗訴リスクが高まるからです

 

サービス残業をさせればさせるほど、企業は、訴訟リスクを高めて、一発アウトの可能性を自ら高めていると僕は思うのです。

 

僕は、労働者が求めているのは、「高い給料」以上に、「企業側が法律をしっかりと遵守してほしい」ことだと思うのです。労働契約の時点で、労働者側が初任給の額を知っていて、その契約に了承したのなら、企業側には何も言われる筋合いはありません。嫌なら内定を辞退すれば良いのです。

 

しかし、日本企業の厄介なところは、「労働契約書に盛り込まれていない暗黙の了解的な要素」が多すぎることです。労働契約書に書かれていることが全てではないところです。人間関係などは明記できないので、しょうがないと思いますが、明らかに不都合を隠すために明記していない条件があり、それが問題なのです。日本の企業の労働契約書は信用できないですよ。怖いです。

 

私は、日本の企業はアメリカの水準までに給料を上げろと言いたいわけではありません。アメリカは日本よりも解雇しやすいので、地盤が違います。しかし、「労働契約書と実際の労働条件に大きな違いがない」ことと、「やむを得ない理由で残業したら、その分をしっかりと払う」ことは大事だと思います。そりゃあ、給料は高い方がいいでしょう。しかしそれ以前に、契約通りの給料を、法律に沿って払ってもらえれば、満足してくれる労働者は多いのではないでしょうか。労働時間に対する対価を、法律を遵守して、きちんといただけるだけで、労働者の満足度も、愛社精神も大きく高まると思います。

 

そして、企業側が、労働時間をしっかりと管理し、残業代をしっかりと払っている場合、企業側の落ち度は少なくなります。そのような状態で、労働者側が不正をすれば、企業側から正義の鉄槌どころではない制裁を食らいます。そうなれば、労働者側も、不正しにくくなると思います。企業に負い目がなければ、不正をした労働者を堂々と一発解雇できてしまいます。そんなリスクを負ってまで、不正はできないです。

 

僕が思うのは、日本企業のより多くが、労働者が安心して労働契約できる企業になってほしいということです。給料が契約通りに、働いた分をきちんと滞りなくもらえる会社には、大きな魅力があります。

 

そして、少なくとも、「過労死」という言葉が日本から世界に広まってしまった以上、日本は、労働者にとって当たり前のことを当たり前にこなして、労働者側が会社に対して自発的に (これ大事です) 尽くしたくなる環境を作っていくのが大事ではないかと思います。

 

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