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なにかが入って、なにかが出る

カガク (化学・科学) 、留学、資格など、経験談を気ままに発信していきます

つけ麺とウイスキーと人間関係と…化学工学の関係

化学工学 化学 科学

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photo credit: Tak H. 味玉つけ (魚介) via photopin (license)

 

こんにちは。てけです。

 

 

ここ最近、ぐっと冷え込んできましたね。東京では11月なのに初雪も降りました。

冷え込む日は、ラーメンとか、温かいものが食べたくなります。この前、つけ麺を食べてきました。

 

濃厚なつゆに、あつもりにしてもらった麺を絡ませて、スッとすすると、体にエネルギーが湧いてくるような気がしてきます。最後には、お楽しみのスープ割りが待っています。スープをつゆに入れた時、単純な「スープ+つゆ」とは全く違う飲み物に変わります。特に、スープを入れた後では、香りがとてもよくなります。でも、ここで気になりませんか。つゆにスープを少し入れるだけで、あれほど様々な香りが引き出され、味まで変わるのは何故なのでしょうか。

 

実は、このスープ割りには、化学工学屋にとっては、興味深い現象が関わっているんですよ。「割る」ということは、単純に薄めるだけではないんです。「割る」ことで、割る前には顔を出さなかった美味しさの元を引き出しているんですよ。実際、「割る」ことの研究は、論文まで出版されているくらい、化学工学の理論が生かせる分野なのです。

 

僕は化学工学を学び、この「割る」ことの科学の奥深さを知りました。「割る」って、面白いんだなと少しでも思ってもらえたらと思います。

 

 

「つけ麺つゆのスープ割り」は、つゆの隠れた魅力を引き出してくれます

では、まずつけ麺つゆとはどのような液体か考えてみましょう。つけ麺つゆの多くは比較的とろみがあり、脂分が多いですね。

 

ここで、香り成分の多くは、分に溶けやすいものが多いです。なので、脂分が多い状態では、に溶けやすい香り成分が、の中に安定して溶け込んでいます。安定している状態というのは、の中に完全に包み込まれているような状態です。の中から離れたくないので、濃厚な香り成分の多くは、つけ麺つゆの中に閉じ込められています。香り成分の周りを、脂がしっかりと膜を張っているような状態になっています

 

そこに、スープを注いでみると、大量の水分が入ってくるので、つけ麺つゆは脂分の多い状態から、水分の多い状態になります。すると、それまで香り成分を覆っていた脂の膜が壊れるので、香り成分が一気に放出されるのです。同時に、脂に溶けやすい旨み成分も、脂の膜から解放されるので、よりたくさんの旨み成分を舌で感じやすくなります。

 

そして、熱々のスープを注ぐとスープの温度が上がります。脂の膜を失い、外に放り出された香り成分は、熱いスープによって温められ、空気中にふわふわと漂い出します。その香り成分が鼻に入り、より強い香りを感じるようになるのです。

 

 

 

なので、是非皆さんに試していただきたいのは、「白湯をスープに入れて飲んでみる」ことです。スープではなく、白湯です。白湯でも、割った後には香りも味も本当に変わります。今は冷凍食品でもつけ麺が売っていますので、お家で試してみてほしいです。

 

 

ウイスキーの水割り」「焼酎の水割り」も、「つけ麺つゆのスープ割り」と同じ原理で香りと味を引き出しています

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photo credit: Lee Carson One Whisky via photopin (license)

 

つけ麺のスープ割りと同じ現象は、ウイスキーの水割りでも起こります。ウイスキーの水割りは、ストレートのウイスキーよりも香りが強いと言われています。ウイスキーのテイスティングでは、ストレートのウイスキーではなく、水割りのウイスキー (ウイスキーと水を1:1で合わせたトワイスアップという水割り) をテイスティングするほど、水割りは香りと味を立たせてくれるのです。

  

ウイスキーの香り成分は、ストレートの状態では、ウイスキーの中に含まれているアルコールの膜に守られています。アルコールは、水に溶けやすい成分も、脂に溶けやすい成分も溶かすので、ここではアルコールが、香り成分の多くを溶かし込んでいます。

 

そこに水を加えると、脂分と同じ役割を果たしていたアルコールが薄まり、香り成分を守っているアルコールの膜が破れます。すると、今まで守られていた香り成分が外に溢れ出て来ます。溢れ出て来た香り成分は、空気中に散らばりやすい (揮発しやすい) ので、空気中にふわふわと漂い出します。ストレートの時よりも、多くの香り成分が空気中に出て行かざるを得ないので、鼻もより多くの香り成分を感知します。より多くの香り成分を感知し、結果的に、より強い香りを感じているのです。

 

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photo credit: arbyreed Bubbles via photopin (license)

 

水割りによりどのように香りが立つようになるのか、そのメカニズムを研究した論文もあるほどです。ただ、有料なのと、化学工学の専門知識が必要かもしれないこともあり、読まれるのはあまりオススメしません。あくまでご紹介まで。

onlinelibrary.wiley.com 

 

 

料理と化学、化学工学はつながっているんです

このように、つけ麺のスープ割りやウイスキーの水割りには化学工学の世界が深く関わっています。僕たちは、モノを料理して食べる時、化学工学や化学の理論をいつのまにか使っているのです。

 

例えば、パスタや麺を茹でる時、皆さんは、「物質移動」や「熱移動」、「熱力学」の概念を利用しています。化学工学の知識を使えば、パスタがアルデンテになる時間を計算できます。

 

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photo credit: Matt McGee Dinner for One via photopin (license)

 

 

例えば、納豆やヨーグルトを作る時、皆さんは、「発酵」という化学反応を利用しています。化学工学の知識を使えば、納豆の発酵がどのような温度で一番進むのか、何日くらいで食べ頃になるのか、発酵がいつ終了し、いつから (発酵ではなく) 腐り始めるかなどを計算できたりします。

 

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photo credit: sjrankin Processed Soy Bean via photopin (license) 

 

なので、料理は立派な学問にもなり得るのです。 例えば、アメリカのマサチューセッツ工科大学 (Massachusetts Institute of Technology) には、「キッチン化学 (Kitchen Chemistry)」という講座があります。「料理」を、化学的な視点で考えてみようというものです。

ocw.mit.edu

 

 

人間関係だって、同じ考え方の人たちだけの濃い関係より、いろいろなひとでうまく「割る」方が、楽しくなりませんか

ここで、「割る」ことに話を戻しましょう。「割る」ことの素晴らしさは、人間関係にも言えるのではないかなと僕は思います。たくさんの人たちが共存できるから、それぞれの個性が活きるのではないでしょうか。同じ性質の人たちが集まると、考えが凝り固まってしまいます。そこに、全く異なるバックグラウンドを持つ人々が加わることで、より人々の考え方に多様性が生まれ、常識がちっぽけな世界での常識であることに気づかされ、結果として一人一人が自分の個性を活かしやすくなる世界になればと思っています。

 

僕は、多様な人間と付き合っていくのが好きです。社会を色々な人で割っていくことで、個性という香りが際立つ社会にしていけたらなと思っています。その方が絶対楽しいです!

 

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