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なにかが入って、なにかが出る

カガク (化学・科学) 、留学、資格など、経験談を気ままに発信していきます

失敗をマイナスと考える社会が、公共交通機関で泣き出す赤ちゃんに対して冷たい人を生み出しているのかも

文化 ダイバーシティ ボランティア

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こんにちは。てけです。

 

公共交通機関で赤ちゃんが泣き出した時に、日本では、その周りの人間は冷たいと言われます。そして、この時に必ずといっていいほど、アメリカやヨーロッパの事情を持ってきて、「アメリカでは/ヨーロッパでは、赤ちゃんが泣き出しても周りは温かいのに、なんで日本はこうなんだ!」という人がいます。

 

 

確かに、僕がアメリカにいた時にも、公共交通機関の中で赤ちゃんが泣いてしまっても、温かな雰囲気はありました。日本のように、お母さんが殺伐とした雰囲気を感じるということは少ないのかもしれません。

 

しかし、その根拠として「アメリカに住んでいる人は、公共交通機関で泣いている赤ちゃんに対してイラついていない」という人がいますが、それは若干違うのかもしれません。ここを誤解してしまっている人は結構いるのではないでしょうか。

 

以前、Jet Blueという航空会社が、画期的なキャンペーンを母の日に行い、話題を集めました。それは、「航空機内で赤ちゃんが泣くたびに、次回に購入する航空券の値段が25 %ずつ下がっていき、4人以上の赤ちゃんが泣くと、100 %割引、つまりタダになる」というもの。赤ちゃんが泣けば泣くほど、拍手喝采が巻き起こり、お母さん方も嬉しそうです。とても温かな雰囲気にさせてくれる動画です。

 


JetBlue | FlyBabies

 

しかし、この動画は、「アメリカであっても、これほど強烈な割引を行わなければいけないほど、公共交通機関で泣く赤ちゃんに悩まされている人が多い」ということの裏返しでもあります。

 

僕がこの動画を見つけた時に読んだ記事、Adweekでは、広告代理店のMullenlowe社が行った調査で、「40 %のアメリカ人が、航空機内で泣く赤ちゃんに悩まされている」と答えています。結構高いのです。

 

www.adweek.com

 

さて、ここまでお話ししたところで、僕が言いたいことを、念のためはっきりさせておきます。僕は、公共交通機関で泣いてしまう赤ちゃんを批判するつもりも、お母さん方にもっとしっかりするように言うつもりもまったくありません。むしろ「本当にお母さんたちは大変そうだなあ、僕に何か手伝えることはないかなあ」と考えています。

 

ただ、なぜアメリカでは、公共交通機関で赤ちゃんが泣いても、温かい雰囲気になることが多いのかを、僕なりに考えてお伝えしたいと思いました。そして、その考察に入る前に、アメリカ人が聖人というわけではないことを、まずはお話ししようと思いました。

 

では、日本とアメリカで、なぜ雰囲気が変わるのか、僕は、その鍵は、「自分で泣いている赤ちゃんをあやそうとする人がいるか」だと思います。つまり、「問題を解決するために、自分で動きやすい環境にあるかどうか」が、泣いている赤ちゃんに対するイラつきを軽減したり、雰囲気を暖かくすることに貢献しているのかもと思っています。

 

アメリカでは、他人の赤ちゃんを、周りにいる人があやしたりすることがあります。つまり、泣いている赤ちゃんに対して不快な気持ちを持ったとしても、その瞬間に自分でその解決に向けて動き出している人が結構多いのです。自分で問題を解決している時、自分で何かをコントロールしようとしているので、不快な気持ちが収まっているのです。周りも、問題に対して、必死に取り組んでいる人がいれば、結構穏やかなものだったりします。「頑張って解決しようとしている人がいるし、まあいいか。」という感じです。そしてうまく問題を解決できれば、お母さんも、周りも幸せになります。こうして、「アメリカでは、電車で赤ちゃんが泣いても、誰も冷たくしないの」という話がいろいろなところでされるというわけです。

 

翻って日本では、「下手に赤ちゃんに話しかけたら、あやそうとしたら何か言われるのではないか、訴えられるのではないか」と怖くなってしまったり、「泣いている赤ちゃんをあやすのは、親の仕事だろ」とか、「親だったらないている赤ちゃんぐらいあやして当然」という考えを持っている人が多く、自分からあやしに行こうと思う方はまずいないのではないかと思います。そうなると、「自分が問題をコントロールできない状態」となるので、苛立たってしまうのだと思います。そして、周りの、「どうにかしたいけど、自分ではどうにかできない (あるいはしない)、だからお母さんよ、どうにかしてくれ」という思いが人を苛立たせてしまい、結果的にお母さん方を苦しめてしまうのだと僕は思います。

 

そして、この話は、「ボランティア精神」につながる話にもなってきます。

 

ボランティア精神というと、大部分の方は、「慈善事業に従事すること」を思い浮かべると思います。しかし、本当のボランティアとは、慈善事業に従事する必要はまったくなくて、「自分でより良い結果をもたらすために動くこと」なのです。

 

オックスフォードの英英辞典には、volunteer (動詞) は、"freely offer to do something" と記載されています。すなわち、「見返りを求めずに、何かをしてあげること」と定義されています。

 

en.oxforddictionaries.com

 

このボランティア精神を持っていると、周りで問題が起きても、「自分が解決しなければならない」という意識が芽生えます。そして、問題に自分から飛び込み、対処するようになるのです。そして解決できた時には、ヒーローになれます。アメリカ人は「ヒーロー」という言葉に弱いのです。そして、誰かのヒーローになるために、主体的に行動すべきだという土壌があります。

 

「アメリカでは、問題があっても、手を差し伸べてくれる人がいる」というのは本当ですが、これはこのボランティア精神によるものです。

 

そして、日本でも、この「周りで問題があった時に、自分から飛び込んで解決する」人は、決していないわけではありません。むしろ、たくさんいると思います。私も、路上でトラブルがあった時に、周りの人に助けてもらった記憶があります。日本でも、ボランティア精神を持っている人はたくさんいます。しかし、将来を考えると、日本では、ボランティア精神を持つ人を育てにくい環境になってきているような気もしています。なぜでしょうか。

 

その理由は、人を評価するときの方式が「減点方式」だからです。「減点方式」では、人は失敗を恐れます。「挑戦して失敗しながらも大きな成功を収める」ストーリーではなく、「失敗を最小限に留めて生きる」ストーリーが好まれるようになります。失敗できない環境では、挑戦ができませんから、周りで問題が起きても、思い切って手を差し伸べることに臆病になります。手を差し伸べて失敗したらと怖くなってしまうのです。

 

職場などでも、「最近の若手は指示待ちで困る」という声が聞こえてきたりしていないでしょうか。僕は、指示待ち人間を作り出してしまったのも、日本の「減点方式」なのではないかと考えています。自分で主体的に考えて行動すれば失敗することもあります。しかしその失敗を咎められれば、より権限のある人の指示に従って動いたほうが、自分の身を守れるのではないかと考えてしまう人が生まれてしまいます。

 

人を批判的に評価するのではなくて、まず長所を探して高く評価し、短所があれば、長所で短所を補えないか考えるという視点が大事で、そのためには、人を減点方式ではなく、加点方式で見たほうがいいかなと思います。子供のうちから、「…ができないからダメだ」と言われるのではなくて、「お前は特別だ。だって…ができるから」と言われて育った子供は、より、自分の長所に自信が持てるのではないでしょうか。自分に自信が持てるようになれば、「自分が正しいと思うのだから、今、手を差し伸べよう」と考える人も増えるのかなと思います。

 

この加点方式で育てられた有名人に、スティーブ・ジョブズがいます。ジョブズは、養子として迎え入れられてから、育ての両親にいつも、「You're special.」(お前は特別なんだ) と言われながら育てられたそうです。お世辞ではなく、本当に素晴らしい素質がある子供であることを両親は見抜き、その長所を育て続けてくれたのでしょう。そのことに、ジョブズは大変感謝していて、育ての両親がいたから自分に自信を持つことができたと言っています。その自信が、「自分がほれこむデザインは絶対に素晴らしいと心の底から信じる」ジョブズを生み出し、イノベーティブなプロダクトにもつながったと僕は思います。ジョブズの天才的なプレゼン能力も、その圧倒的な自信から生まれたものだと思います。

 

参照元: ジョブズの伝記です。僕の大学の化学工学科であった、イノベーションとプロダクトデザインの授業の時に読むことが義務化されていたので、全部読みました。本当に面白かったです↓ 

Steve Jobs

Steve Jobs

 

 

日本の減点方式がなくなって、できないことに対する非難ではなくて、できるようになるための提案が増えれば、もっと人生において挑戦を楽しめるようになって、失敗しても周りから叩かれたり笑われたりしない社会になるのかな、と思っています。そうすれば、公共交通機関で赤ちゃんが泣いてしまっても、周りが温かく、泣いている赤ちゃんをあやしてくれたり、お母さん方に温かな言葉をかける日がくるのかもと考えます。そうして少しでも、周りの人が公共交通機関で泣いてしまう赤ちゃんに対して関わることができたら、お母さん方も肩身の狭い思いをしない社会になるのかもしれません。

 

 

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